二十数年前の夏休み。
当時、小学5年生だった私は
その日、小学校にあるプール場の前で
プール開きがはじまるのを待っていました。
夏休みの楽しみといえば、プール遊び。
学校の授業がない夏休みに
友達と遊べるのがうれしくて
プールの時間を毎日楽しみにしていました。
プール開きの時間になり、
監視員の人が扉を開けてくれます。
しゃがんで日陰に入っていた
私は立ち上がろうとしました。
ところが――。
立ち上がったとたん
目の前が真っ白になっていきます。
立ちくらみかと思い、
目をつぶって収まるのを待ちました。
しかし、収まるどころか
からだが後ろに倒れていくような――。
とっさに手すりをつかんで壁に
寄りかかると友達が声をかけてくれました。
「大丈夫? 顔が青白いよ」
気分が悪くて、何も答えられません。
そのあとの記憶はなく、気がつくと
プール場の休憩室で横になっていました。
からだを起こすと
近くにいた監視員さんと目が合います。
しばらく眠っていたようです。
プールで楽しそうに遊ぶ
みんなの姿が遠目に見えます。
目が覚めたあとも、自分の身に
何が起きたのか理解していませんでしたが、
その日はプールに入らず、帰りました――。
小中学生の熱中症がよく起きる場面は?
今年ももうすぐ7月。
夏本番に向けて
気温の高くなる日が増えています。
「熱中症に気をつけてね」
「しっかり水分をとってね」
そんな言葉かけも目立つ季節となりました。
日本では環境省が
熱中症予防情報サイトを開設しています。
そのサイトにある資料
「熱中症の現状と今後について」によると、
以下のことがわかります。
■7~18歳 熱中症発生場所
1位 運動中
2位 公衆出入り場所
3位 住宅
■65歳以上 熱中症発生場所
1位 住宅
2位 道路・駐車場
3位 公衆出入り場所
高齢者の熱中症は、
その6~7割が住宅で起きていますが、
小中学生・高校生においては
半数近くが「運動中」なのだそう。
当時小学5年生だった
私が倒れた原因も熱中症でした。
プール開きに参加するためには、
学校で配られるスタンプカードが必要です。
私はそのカードを家に忘れてしまい、
すでにプール場に着いていましたが、
あわてて走って取りに帰ったのでした。
家から学校まで歩いて20分。
その距離を1.5往復していたのです。
照りつける日差しのなか
帽子もかぶらず、水分もとらず……。
そのため
熱中症になってしまったのでした。
側にいられない親ができること
熱中症は最悪、
死に至ってしまう怖い病気です。
命は助かったけれど
重い障害が残ってしまうケースもあります。
子どもだったころの私のように、
知らず知らずのうちに無理をしてしまう。
そんな子もいるかもしれません。
私には、いま4歳の娘がいます。
友達と遊ぶのが楽しくて仕方がないようで
外で遊び、暑さで顔を真っ赤にしています。
負けず嫌いな一面もあるので
将来、スポーツをするようになったら
きっと伸びるだろうなあと想像しています。
でもやはり夏は熱中症が心配です。
子どもの健康を守るために
親として何ができるのでしょうか。
熱中症予防情報サイトによれば
熱中症を引き起こす要因は3つあるそう。
■要因1 環境
■要因2 からだ
■要因3 行動
「環境」は、気温や湿度の高さなど。
「からだ」は、
年齢、持病、脱水状態などの個体差。
「行動」は、
運動量や作業状況、水分補給できるかなど。
これらが要因で体温が上昇し
体温調節機能がうまく働かなくなり、
熱中症になってしまうのだそうです。
「環境」と「行動」について
大きく変えることはできないと思いますが
「からだ」については親にも
何かできることがあるかもしれませんね。
分子栄養学の観点から考えてみましょう。
カラダは食べたものでできている
上がった体温を下げるために
「汗」が重要な働きをしています。
汗をかけなければ、体内に熱がこもり
熱中症になってしまうのだそうです。
では「汗」は何から
つくられているのでしょうか。
その90%以上が水分ということは
多くの方がなんとなくご存じかと思います。
じつは汗は「血液」から
つくられているのだそうです。
そのため、
血液の量を増やすと
汗がかきやすくなったり、
血流が良くなったりして、
からだに熱が
こもりにくくなると言われています。
では、血液量を増やすには
どうしたらいいと思いますか?
こまめに水分をとることも大切です。
しかし「アルブミン」が有効ということは
あまり知られていないかもしれませんね。
アルブミンは、
からだの中に存在しています。
アルブミンの役割のひとつが
水を引き寄せて保持することです。
つまり、血液の中に
存在するアルブミンを増やすと
血液中の水分が保持されて
血液量も増える仕組みになっています。
では、アルブミンは
どうしたら増やせるのでしょうか。
アルブミンは、たんぱく質です。
食事でたべられた肉や魚、卵などの
たんぱく質が体内でアルブミンへと
変化してできていると言われていて、
アルブミンを増やすには、
毎食たんぱく質をとると良いそうです。
たんぱく質、足りてる?
たんぱく質の必要量は、ざっくりと
「体重×1.0g」が目安だと言われています。
たとえば、
『日本人の食事摂取基準(2020年版)』では
小学5年生の女の子が1日に
必要とするたんぱく質の量は40gであり、
また、推奨される量は50gと書かれています。
・卵1つ 6g
・鮭1切れ 20g
・納豆1パック 7g
・豚ロース手のひらサイズ 13g
これらのたんぱく質量の合計が46gです。
朝、昼、夜に分けて食べれば
無理なく食べられそうな量ですね。
しかし朝は
眠くてたくさん食べられなかったり
時間がなくてゆっくり食べられなかったり
そういった方が多い印象があるので
朝ご飯におすすめしたいメニューを
いくつかあげてみますね。
・スクランブルエッグ
生卵に牛乳や豆乳を混ぜて焼くと
ふんわり柔らかくなって食べやすくなり
たんぱく質量も増やせるのでおすすめです。
・みそ汁
豆腐や油あげを具材にすると
たんぱく質の量が増やせます。
お好み焼きの風味アップによく使われる
「けずり粉」をかけて飲んでみてください。
たんぱく質がちょい足しできるだけでなく
お出汁の味が感じられて、おいしいです。
・うす切りの牛肉
フライパンで火を通すだけで
すぐ食べられるし「牛肉」というだけで
食欲アップするのは、私だけでしょうか?
私は焼き肉のタレで食べることが多いです。
・ボーンブロス
これ1杯でみそ汁の2倍以上の
たんぱく質がとれたり、消化吸収に負担が
かかりにくい形状になっていたりするので
朝食にあると心強いスープです。
夏の「食欲がない……」を防ぐためにできること
熱中症になりにくいカラダになるには
たんぱく質をとるのが良いとわかりました。
しかし、気温が高くなってくると
夏バテで食欲が落ちてしまうという方が
多いのではないでしょうか。
そうめんのように
冷たくてツルッと食べられるものを
好んで食べちゃいますよね。
「お肉なんか、食べる気分にならないよ」
そんな声も聞こえてきそうです。
ですが、夏バテを起こす前に
意識してとりたい栄養素があります。
それは「亜鉛(あえん)」です。
亜鉛は体内でつくることが
できない「必須微量ミネラル」で
全身の細胞に存在している栄養素。
亜鉛が不足すると、消化管の
粘膜が縮んでしまうと言われています。
胃腸が硬くなる、と表現すると
わかりやすいのではないでしょうか。
胃腸が硬くなると
消化液がうまく出てこなかったり
消化管運動がスムーズにできなかったり
そういったことがあるので
食欲がわきにくくなるのだそうです。
夏バテって、
じつは亜鉛不足が関係して
起きているのではないかと思うんですよね。
というのも、
亜鉛は汗で流れやすい栄養素なのだとか。
ですので、亜鉛が不足しないように
毎日コツコツ補充したいと思っています。
亜鉛、足りてる?
■亜鉛不足チェックリスト
▢ 風邪を引きやすい
▢ 抜け毛が気になる
▢ 爪に白い斑点がある
▢ 加工食品をよく食べる
▢ 蚊に刺されると腫れてしまう
この項目に心あたりのある方は
亜鉛が不足しているかもしれません。
亜鉛は毎日少しずつ、
長期的にとることで満たされる栄養素です。
亜鉛が多く含まれている食材には
どういったものがあるのでしょうか。
じつは、白いごはんにも含まれています。
ごはん1杯分(150g)に
含まれる亜鉛の量は0.9 mgです。
そのほかの食材に含まれる
亜鉛の含有量は以下のとおり。
・卵1つ 0.6mg
・豆腐半丁 1.2mg
・生牡蠣3つ 6.3mg
・牛モモ肉200g 9.6mg
1日に推奨される亜鉛の量は
小学5年生の女の子で6mgです。
分子栄養学界隈で
成人女性に推奨される量は15~30mg。
食事では満たされにくいと感じたら
サプリでとることも考えていいのかなと
個人的には思いました。
夏バテには「亜鉛」。
熱中症には「たんぱく質」。
毎日の食事でできる対策です。
家族の健康を守るためにも、
自分の体調管理のためにも、
ぜひ覚えてくださいね!